コラム◆IT散歩/第11回:「“亥 = 0x88E5”、文字コードの世界」(後編)〜Font(ほんと)の話〜

中編にて新元号を「永愛(えいあい)」と予想したが・・・

「令和(れいわ)」

時、初春の令月にして、氣淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す。

〜万葉集〜

時あたかも新春の好き月(よきつき)、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉(おしろい)のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香の如きかおりをただよわせている。

中国ではなく日本の古典から求めたことでも話題になったが、情景がイメージされ、やわらかな風を顔に感じる。良い命名だと思っています。
令和時代が良い時代となるかは、私たち次第ですが。

「大化」から始まり「令和」へ

元号の起源は中国だが、現在は中国も韓国も使用していない。

「令和」は日本における248個目の年号。
初めての年号は、女性天皇である皇極天皇(第35代)の時、645年7月20日での孝徳天皇(第36代)即位において「大化」となった。元号は途中で途絶えた時期もあるが、今も脈々と続いている。

過去は天皇即位の改元だけでなく、大地震や大火、天変地異での災害などで災異の改元をしてきた。国の繁栄や人々の平安を願ってである。現在は、昭和54年6月6日に成立、同月12日に施行された「元号法」に則り、皇位の継承があった場合に限り改める「一世一元の制」となっている。

国民主権との齟齬があるなどで元号不要論が叫ばれることもあるが、「昭和の時代」「平成の時代」と、元号によって時代を総括し「令和の時代」として新たな気持ちをもたらせてくれる。“単なる連続”ではない「日本固有の文化」であり無くしてほしくはない。

元号の期間が長い、短いランキング。

ちなみに、「朱鳥(しゅちょう/あかみとり)」(686年)が短期の1位というネット情報もあるが、「朱鳥」の改元には謎が多いようで上記情報で記載した。
昭和という時代は長かったんですね〜。


さて、前編・中編にて文字コードからフォントまで話を進めてきた。
前回の最後に「フォントはデザイン」であるとも書いた。
改めて・・・・

【フォント】

「フォント」は「書体」と同義であるとも言えるが、コンピュータや印刷など、人とのインタフェースに利用するための「より具体的な書体」。
もっと言えば、英字の「A」は文字コード(ASCII)で「0x41」。では、「A」をディスプレイ装置に表示するにはどうするか。表示のためのデータが「フォント」である。

各書体には、数種の具体的なデータであるフォントが存在する。
「ゴシック体」という「書体」には、「MSゴシック」「メイリオ」「遊ゴシック」「ヒラギノ角ゴシック」など。

前回、「フォントファミリー」の話もした。
WORDのフォント選択で「Times New Roman」にマウスを当てると、図のように「Bold」「Bold Italic」「Italic」「Regular」が表示される。

これがフォントファミリーだが、「ヒラギノ角ゴシック」だと「W0」から「W9」が表示される。これもフォントファミリー。「Wn」という文字表示自体も“太さ”が異なることが分かる。

「W」は「ウェイト」、「文字の太さ」。なぜ「ウェイト」なのか?文字が太くなることによる感覚的な“重さ”なのだと思うが、理由を見つけられなかった。

【和文フォントと欧文フォント】

両者はフォントをどう構成するか、それが異なる。

和文フォントは、正方形の枠に中に収まるように構造化されている。これにより、縦書きにも横書きにも対応できる。この正方形の枠が「仮想ボディ」であり、フォントサイズに該当している。
仮想ボディは余裕があり、実際の文字は「字面」に収まる。

なお、「ベースライン」は和文と欧文を組み合わせる際に基準線として利用される。

欧文は日本語の文字と比べれば単純な文字だが、大文字や小文字、上下の出っ張りなどデザインとしては構造が複雑。基本的に横書きであり、基準線である「ベースライン」より下に抜ける文字や背の高い文字、低い文字など、「字面」の大きさは様々となる。

「仮想ボディ」の大きさがフォントサイズとなるので、「ならば和文とは・・・」と思う方もいるだろう。四角形の中に納まる和文と、上下に飛び出し、また横の文字間も変わる欧文が混ざるとき、同じフォントサイズを指定しても見た目のバランスに問題が起こるのは分かるだろう。

和文と欧文が混ざる場合に美しい文章を作り出すには、フォント種類の組み合わせに気をつける必要がある。

図内の文章は全て同じフォントサイズであり、ゴシック系(和文はゴシック、欧文はサンセリフ)。
「日本語:メイリオ、英数字:Calibri」の場合は、日本語と英数字の見た目の大きさの違いが顕著、英数字が小さすぎる。一方、「日本語:メイリオ、英数字:Segoe UI」は違和感がない。

今度はどうか?
やはり同じフォントサイズであり、明朝系(和文は明朝、欧文はセリフ)。
「日本語:MS明朝、英数字:Century」の場合は、感覚として英数字が日本語と同じような幅を持ち、太く大きく見え、バランスが悪い。「日本語:遊明朝、英数字:Times New Roman」の方はバランスが良い。

【記号(約物)の位置】

「約物」とは、「くぎり符号」「つなぎ符号」「括弧類」などの総称。
欧文には半角、日本語には全角が一般的に使われる。図を見てください。
欧文フォントでの半角「( )」は、日本語の字面より下に抜けてしまう。日本語文章の場合、約物は全角とすることが基本であるが、和文フォントでは下に抜けることはない。

なぜ、欧文フォントの半角約物はラインの位置が異なるのか?
それはアルファベットの小文字に合わせているためである。

「:」では、小文字の「y」の右にて平均した位置にはならない。
欧文フォントでの半角約物は、全ての文字を通してバランスの良い位置を求めることはできないということ。

【文字は溢れている】

フォントはデザインと何度か言ってきた。

文字の読みやすさを決める要素は、
・可読性・・・文章の読みやすさ、スムーズに読めるか
・視認性・・・文字の見やすさ、目立つか
・判読性・・・文章や単語を読み間違えないか

コンピュータ、パソコンの世界だけでなく、私たちは普段から常に文字に接している。電車で通勤している方は、毎日駅名標を見ている。あのフォントは何か?気になってネット検索してみると・・・
世の中、素晴らしい人がいて、調査した(誤りもあるかも知れないが)情報を掲載してくれている。

ikebukuroeki

(池袋:和文 | 新ゴB、欧文 | Helvetica、駅番号 | Frutiger Bold)

higashiginzaeki

(東銀座:和文 | 新ゴM、欧文 | Frutiger Bold、駅番号 | Frutiger Bold)

池袋駅、東銀座駅の和文フォントは「新ゴB」「新ゴM」。これは株式会社モリサワが提供するフォント。大正13年創業のモリサワ社は日本において文字に対する老舗と言えるだろう。
もっといろいろな駅名標を見たい方は、こちらのサイトを訪れてください。→ https://mitok.info/?p=112655

ちなみに、トヨタ自動車のロゴは「Helvetica」だ。また、Flickrのロゴは「Frutiger」。

  

フォントのデザイン会社は常に良いフォントを研究し開発している。

他社も手がけているが、モリサワ社ではユニバーサルデザインとしての書体である「UD書体」を提供している。「文字のかたちがわかりやすいこと」「読みまちがえにくいこと」「文章がよみやすいこと」がUDの重要なコンセプト。
美しさを追求しても、読みづらければ意味がない。

図を見てください。「Century Gothic」は「a」「o」「e」を誤読する可能性がある。「1」と「l」も同様。「Adobe Caslon Pro」は「1」と「l」がほとんど同じに見える。

ただ、判読性はもちろん重要だが、UDのようなコンセプトを追求した結果として、美しさをなくしてはいけない

フォントに対する様々な比較調査(低視力シミュレーション、ロービジョン(弱視)検証、タブレット上/印刷での調査、ディスレクシア(読み書き障害)のある小学生での検証など)や、フォントに対する“挑戦”について、モリサワ社の活動を紹介したいのだが、著作権の関係もある。
興味があればモリサワ社のHPで確認してください。

「フォントはデザイン」。相手は人、文字を見るのは人である。

文書においても、プレゼンテーションにおいても、「フォント」というものを見つめ直してみると、人を相手に作成する点において、新たな可能性や楽しさを感じるのではないだろうか。

 

参考文献
「伝わるデザインの基本」(高橋佑磨、片山なつ)/発行所 技術評論社

文責:永井一美

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