コラム◆IT散歩/第8回:「暦って?そして、2000年問題を懐かしむ・・」

今回は、「暦」について改めて考えてみた。「全て分かっている」という方はスルーしてください。

うちのかみさんは、「六曜が書かれていないカレンダーはいらない」と。
「大安」「仏滅」といった六曜は生活をするに必須ではないが、行事を決める際に利用される。

では、干支について・・・子どもに「来年(2019年)は何年(なにどし)?」と聞かれ、「来年の干支は亥(いのしし)だよ、今年は戌(いぬ)だったでしょ」。

正しいようで、本来は正しくない。

「干支(えと)」とは、「十干(じっかん)」の「干」と「十二支(じゅうにし)」の「支」のことだから、「来年の干支は“己亥(つちのとい/つちのとのい)”だよ」となる。

しかし、「己亥(つちのとい)」・・・子供に言っても分からない。大人だって普段は使わない。「来年の干支は亥」で実際は問題ない。

正確な干支は十干と十二支の組み合わせとして60種類なので、60年周期。「還暦」はこの干支から。赤ちゃんに戻り、赤いちゃんちゃんこを着る。

十干は、  意味として、 

見ての通り、「曜日」と関連している。そして、「」と「」の対であり、「え」は兄、「と」は弟。兄=陽、弟=陰、として陰陽思想(万物はすべて陰と陽に分類される)からきており、干支(えと)という読みとも関係がある。

ビジネスでの契約書において、甲・乙・丙が利用される。また、甲子園球場は竣工式が1924年(大正13年)の甲子(きのえね)であったために名付けられた。

今年の大河ドラマである「西郷どん」は西郷隆盛の死で終わってしまったが、西郷隆盛と勝海舟の交渉による江戸城無血開城や、上野戦争、会津戦争での白虎隊の悲劇、土方歳三が戦死した函館戦争など、多くのドラマが生まれた「戊辰戦争」も、明治元年が「戊辰(つちのえたつ)」であったことからきている。

・丙午の迷信

図1は、出生数及び合計特殊出生率(厚生労働省)。(クリックすると大きくなります)

「丙午(ひのえうま)」も、もちろん60年周期。
前回の「丙午」は1966年(昭和41年)。厚生労働省の「出生数及び合計特殊出生率の年次推移」を見ると、みごとにこの年だけ出生数が減っている。

【丙午(ひのえうま)の迷信】
 丙午の年に生まれた女性は気性が激しく、夫の命を縮める

その年の女性の方、ごめんなさい。迷信です。

迷信の発端は「丙午の年には火事が多い」、そして「八百屋お七」が丙午の生まれとされているからのようだが、お七が本当にその年の生まれかは分からない。

【八百屋お七の物語】

駒込(または本郷)の八百屋の娘であるお七は、天保2年(1683年)に発生した天保の大火(死者3千人)によって被災する。

家族ともども、お七はゆかりのあるお寺に避難する。この避難先で寺の小姓と恋仲になる。その後、復興し八百屋が建て直され、避難先の寺を去ることになったが、小姓のことが気になってしかたがないお七は、また共に生活したいと日々思い焦がれるようになる。

そして、考えてはならない考えを描く。それは、「火事が起き、また焼け出されたら、再び寺に避難し小姓と生活ができる」。思いつめたお七は、遂に自分の家に火を放つ。

火はぼやで消し止められたが、江戸の町を焼け野原にしてしまう火事は脅威であり、放火は重罪。

お七はわずか15歳であったが、放火の罪で捕縛され、鈴ヶ森の刑場で火あぶりの刑となった。


実際、お七の史実は良く分かっていない部分が多いようだが、井原西鶴の「好色五人女」により広まった。

江戸の人たちは、いたいけな少女の純粋な恋心と火あぶりの刑という悲劇に涙した。


文京区「円乗寺」にある八百屋お七の墓

一方で、「火の怖さ」「火の脅威」から、「丙午の迷信」は生まれたのだろう。

しかし、江戸時代に生まれた迷信が明治、大正を超えて昭和の時代にも影響しているのは、いかに人が、暦や、天地、神格に絡むことを大切にしているかを表している。

「丙午」、次は2026年。出生率はどうなるだろうか?

なおアメリカに干支はないが、認識されており「zodiac」と言う。星座に絡んで天の黄道帯を指し、それを干支の訳としている。未解決の連続殺人事件である「ゾディアック事件」(映画にもなった)ってありましたね。

・「2000年問題」

話しは「2000年問題」へと遡る。

そう、西暦をコンピュータとして2桁で判断していた(“89”ならば“1989”)ために起こる(“00”年は“1900”年になってしまう)問題。
「Y2K」と呼ばれ、コンピュータの誤作動によって「北朝鮮からミサイルが飛んでくる」など、“この世の終わり”という煽情的と言ったら良いのか、そんな情報がまことしやかに流れていた。

1999年12月31日、情報システムに関わる人は多くが会社や現場に待機して2000年1月1日を迎えた。

JRでは12月31日から1月1日にまたがる時間、列車をストップ。当時のJRプレリリースが残っている。これをみると、列車だけでなくエレベータやエスカレータも止めている。


画像:2000年問題当時のJRプレリリース

私も会社にいた。2000年1月1日の1時頃だったか、小渕さんと記憶している(うろ覚え)。
「大きな問題は起こっていない」と安全宣言をした。

ただ、「まだ早いでしょ」と。1月4日に営業的に稼働をするシステムも多いはずだし、西暦を2桁で表す問題と別に、2000年は“うるう年”だった。

現在は新暦(グレゴリオ暦)。うるう年の計算方法をご存知だろうか。

1つめ、4で割れる年はうるう年。
2つめ、でも100で割れる年はうるう年ではない。平年。
3つめ、でも400で割れる年はうるう年。

2000年はこの3つめにあたる。1900年はうるう年ではなかった。

コンピュータにおいて、1つめと2つめのロジックでしか判断していないアプリケーションやソフトウェアがたくさん存在していた。誰もが「2000年を超えて利用される」とは思っていなかった。2桁での西暦判断も、資源削減という大きな理由はあったが、同様。

太陽暦において、1年は正確には約365.2422日だから、どこかで366日を作らないと季節と暦にずれが生じる。
うるう年はそのためであり、400年に97回ある。

では、3つめのロジックが該当する次の年はいつか?2400年である。3つめのロジックの年を2度経験する人類は存在しない。

結局、うるう年も含め“2000年問題で世界は終わらず”、あっけなく終焉した。2000年問題を終えて当時の会社を辞めたので、それもあり思い出深い。

「暦」に話を戻そう。

・大陰暦、太陽暦、二至二分、四立、二十四節気

人間にとっては、太陽が昇り、そして沈み、また昇るという1日が最初に認識した時間の周期と考えられ、次に月の満ち欠けによる1か月(一朔望月(いちさくぼうげつ))が意識された。1年という周期は長いので、当初は一朔望月を基準とした「大陰暦」が用いられたのだろう。

しかし、大陰暦での1年は354日であり、農耕に重要な“季節”が考慮されてはいなかった。そのため、太陽暦(古くは太陽が地球の周りを1周して元の位置に戻る(実際は逆))が必要となり、日時計により影の長さが最も長くなる日(冬至)と最も短くなる日(夏至)が決められ、1年が決定した。ついで、昼夜の長さがほぼ等しくなる春分と秋分が加えられ、二至(夏至、冬至)、二分(春分、秋分)として1年という周期を四分、さらに中間点に設けた四立(立春、立夏、立秋、立冬)により春夏秋冬の季節を表すことにした。

さらに、太陽が天球上を1年で1周する黄道を二十四等分し、冬至を起点として交代に中気と節気を配列した、これが二十四節気。
TVのニュースで聞いたりするのは「大寒(だいかん)」や「啓蟄(けいちつ)(虫が暖かさを感じ地中から這い出す)」でしょう。それぞれ2019年は1月20日と3月6日。

なお、冒頭の干支だが、近代より前は時刻や方角を十二支で表していた。


図2:十二刻

朝、東から太陽が昇れば6時、明け六つ、西に太陽が沈めば6時、暮れ六つ。

太陽が真南にきたときを12時、午の刻。1日を12当分した。午の刻より前は、今も“午前”、後ろは“午後”である。

「おやつ」は、今は3時だが、「お八つ」で元々は2時。

また、
「お江戸日本橋 七つ立ち 初のぼり 行列そろえて あれわいさのさ コチャ高輪 夜明けて提灯消す」
という童謡にある「七つ立ち」は「暁七つ」で、午前4時に日本橋を立ち京へ向かうという意味。
4時に日本橋を出発し高輪には6時、もうちょっと早く着く気がするが・・・

当時、正確に原子時計でという時刻ではないから、季節によってそれぞれの時刻はまちまちであったはずだし、1時間もそれぞれ長さが違ったはず。

「何分遅刻!」なんて話はなく、もっと鷹揚に天の変化に合わせて暮らしていたんだろう。電車に乗っていて「時間調整をいたします。発車は・・・分です」と放送され「えー」と思ってしまう人間(私)を当時の人はどう思うのだろうか?

なお、天に合わせる意味では、サマータイムもそう言えるかも知れない。

今回、曜日(七曜)については詳細を書いていない。興味がある方は調べてください。

人の生活の基本であるだけでなく、行動の判断になるなど、人が生きていくのにかかせない「暦」を振り返ってみた。

参考文献
  「日本の暦」(新人物往来社)

文責:永井一美

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